成年後見には、あらかじめ自分で決めた人と後見契約を結ぶ任意後見契約と、家庭裁判所で後見人を決める法定後見制度の2つがあります。「任意後見契約に関する法律」 第10条では、(後見、保佐及び補助との関係)として、任意後見と法定後見との関係について定めています。
任意後見と法定後見では、原則として任意後見が優先されます。なぜなら、任意後見を優先させることが、成年後見制度の基本理念である自己決定の尊重に合致するからです。任意後見契約が結ばれ公正証書が作成されると、「後見登記等に関する法律」第5条の定めるところにより、任意後見契約の登記がなされます。これにより、当該任意後見は「任意後見契約に関する法律」 第10条の定めに従い、(後見、保佐及び補助との関係)つまり法定後見との関係において、優先されることになります。
例外として、裁判所は「本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる。」とあります。これは例えば、取消権のない任意後見契約では本人を守ることができない場合、代理権目録の範囲外の行為である場合、あるいは任意後見監督人を選任すべき状態にもかかわらず、選任の申し立てをしない場合、などがある様です。