任意後見契約は、委任者が自分の判断能力が十分なうちに、あらかじめ後見人となってくれる人(任意後見受任者)と任意後見契約を締結しておく制度です。その契約には将来、自分が認知症や精神障害等で判断能力が不十分になったときに、自分に代わって財産管理等の仕事をしてくれる人(任意後見人)を定め、財産管理等の代理権を与えて契約書に記載した法律行為をしてもらうことを委任します。
任意後見契約は、契約自由の原則に従い、当事者の合意により法律に反しない限り、自由にその内容を決めることができます。一般的には2つの内容に分けられ、一つは、委任者の財産の管理に関すること、つまり自宅等の不動産や預貯金等の管理、税金や公共料金の支払いなどです。もう一つが委任者の身上監護に関することです。介護施設や医療施設との契約の締結、入所の手続き、費用の支払いなどが該当します。
財産管理、身上監護のいづれも、代理権を授与する具体的な内容を契約書に記載しておかなければなりません。それを、代理権目録といいます。代理権目録はできるだけ委任者の要望を多く組み入れ作成することが重要です。なぜなら任意後見人が代理できる権利の内容が少なければ、実際に任意後見契約が発効した後に後見人が法律行為を行うことができず、結局法定後見への移行を余儀なくされるからです。